2022年10月07日

「住宅」というくだらないもの

「住宅」なんていう建築は無くっていいんじゃないか?

まもなく完成間近の「小松さんの家」の現場にて、
久しぶりに日が暮れるまでのんびり過ごしながら
ふとそんな言葉が浮かびました。
とてもいい空間になりそうで、小松さんに求められた家族の居場所に少しは近づけたのでは?
と嬉しい気持ちがふつふつと湧いてきて、、、、、そんな時に浮かんだ言葉です。

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僕の仕事柄、「えっ??」って思われる様な、
「そんな事言っちゃっていいの??」と思われる言葉かも知れませんが、
僕の中ではとても腑に落ちる言葉でした。

そもそも「住宅」なんていう言葉は、建築のタイプとして誰かが勝手に名前をつけちゃっただけのものです。
リビングルームとか、ベッドルームとかユーティリティーとかみたいな部屋の名前も同じ。
そういうのは本当はただの概念でしかありません。

名前をつけたのは、きっと住宅を商品として販売したいメーカーだったのかも知れませんね!
カテゴライズしたほうが、販売するためのキャッチコピーが作りやすそうです。
いやもしかしたら学者さんかも知れません。
分類するのが学者さんの仕事ですから。


でもその分類されたイメージが浸透しすぎた事により、
本当に居心地いいかどうかよりも、
「リビングが天井低いなんて!1センチでも高くしてください。」
とか
「リビングだけはこだわりたいのです、、、。」
とか、
「奥様のユーティリティーは、キッチンと隣接させて家事動線を、、、」
なんていうように皆が考える様になりました。

そもそも「住宅」なんていう建築は存在しません。
なのに誰もが「住宅っぽい住宅」を建てなくては、っていう呪縛から
建主家族も、設計者も逃れるのが難しいのが現状です。


どこにだって住めるのになぁ、、、、

っていうのがずっと変わらない僕の考えです。
倉庫だって住めば家になるし、お店だって学校だって、洞窟だって、
自分のものが置けて、プライバシーが守られていて、雨風がしのげれば
どこだって家になる事が可能です。極端かもしれませんが、
「住宅っぽい」だから家になる、っていうよりも、「住みたい」と思えばどこだって家になるのです。

だから「住宅」であることよりも、「住みたい空間かどうか?」「居心地いいかどうか?」が
一番大切なポイントなんじゃないかなーと思いながらこれまでも仕事をしてきました。
だから、僕は「住宅」を設計してあげよう!なんて考えて設計した事は実はいまだに一つもありません。

その代わりに絶対に住んで気持ちいい空間を作ろう、という事は一生懸命考えてきましたし、
「この家族の住みたい空間ってどういうのだろう?」っていう事は精一杯考えてきました。
時にはそれが一般的な「住宅」っぽくなくったってそれはどうでもいいのです。
それが家族が「住みたい空間」であり、「気持ちのいい空間」でありさえすれば!

そんな風に思ってこれまで設計の仕事をしてきたように思います。

そうそう1年以上前、小松さんに設計を依頼された時に、

「仕事忙しいから別荘を建てようかとも思ったけど、それを家で感じられたら最高かなーって思って、、、。」

というような言葉がとても印象に残りました。
そんな経緯で設計を頼んでいただきました。

別荘とかリゾートって、自然の中で非日常を感じて、気分を解放してリフレッシュするために
わざわざ行くところですよね。
それを毎日過ごす「家」に求められるとしたら、、、、、僕たちは何をしたらいいんだろう?

そんな事をずーっと考えていました。
それはいわゆる「住宅」としてこういうものだ、と思い込まされている空間やインテリアやしつらえから、
逃げ切る事にヒントがあるように思っていました。
もしかしたらこの住宅のプランや、選んだ仕上げ材や、お風呂場のあり方など、
いわゆる「住宅」では選ばない方法を選んだところが多かったかも知れません。
でも気持ちいとか、心が解放されるとか、居心地が良いとか、、、、そんな体感に向かっていけば
正しいに違いない、と確信を持って進めました。

「住宅」っぽくはないかも知れないけれど、
小松さんが手に入れたかったのは日常の中にあるこういう空間体験なのでは??


ちょうど先日、
日が沈んでいく現場で一人過ごしながら、なんと居心地がいいんだろう、
もしかしたら少しは手が届いたかもしれないぞ!という
充実感がありました。

同時に、

「あーよかった!住宅なんて目指さなくて!」

という想いがふっと浮かんできたのです。


「住宅」というくだらないもの。

でももしかすると、本当に気持ちの良い空間を目指す時の真逆の存在としては、
大きなものさしになるのかも知れません!

完成が楽しみです。


posted by 西久保毅人 at 23:22| 2022年10月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月14日

料理は因数分解

僕の佐賀の母校、県立佐賀西高はちょっと変わってるっていうか、、、、、。
勉強以外の、どーーーでもいいような事を、めちゃめちゃ気合入れてやる高校でした(笑)。


そんな訳で、先週コロナ禍で延期になっていた「卒業30周年大同窓会」っていうのが
開かれまして、佐賀に帰ってきました!


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この大同窓会は、各学年が毎年やっていて、本番当日も面白いのですが、
本番までの気合の入れようが、ちょっと半端ないというか。
甲子園の優勝旗みたいな同窓会旗、っていうのがあってですね、、、、
それを上の学年から下の学年の実行委員長にへ毎年引き継ぐ儀式があったり。

もう50歳を目前にして実行委員長って、、、、て思いますよね!


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しかしそのおかげで、もう50歳目前の卒業して30年経った元高校生である、おじさんおばさんが
なかなかの人数、母校に集まったのです!
学校もそのまんま。

そしてこの同窓会の名物が、「記念授業」と呼ばれる授業です。
高校3年生の時に担任してくれた先生方が、実際に教室で授業をしてくれる事になっていました!


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そしてまた授業のタイトルが面白くて。

ことばの森

料理は因数分解、、、。

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あー、
なんかなんで僕が、
料理好きで、国語好きな理系になったのかが
ようやく分かった気がしました(笑)。

ほんとーに、専門科目に関係なく
何にでも興味のある先生や、同級生がまわりにたくさんいました。
トウキョウでは出会わなかった変な人たち。

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久しぶりに教室で受ける授業も新鮮でしたが、
なんて面白い先生たちだったんだろう!ってつくづく思いました。

あー、もっときちんと授業聞いとけばよかったなぁ、、、、。


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そして、僕の1年生と3年生の担任だった熱血原田光太郎先生。
源氏物語が大好きで、
いつも授業時間を忘れて話し出すと止まらなくなる先生でした。


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そんな訳で、この日は「記念授業」のはずなのに
そんなの忘れて、授業では語れないオトナの源氏物語について熱く熱く、
乗ってくるとチョークは折れる折れる、、、、。

そして案の定、授業を延長してもらっっても、やはり話切りませんでした(笑)。
今年で78歳との事ですが、
30年前とまったく変わらない板書と熱量。


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数年前、そんな先生の教え子である僕が東京で、
源氏物語の新訳という大作を手がけられた作家の角田光代さんのご自宅を設計させて頂きました。

これは全くの偶然ですし、この日まで思い出しもしなかったんですが、
なんか繋がっているような気がしたのです。人生は不思議ですねー!

あー、原田先生に会わせたいなぁ、、、、。

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そうそう、そういえば20代の頃まで
僕は国語の先生になるか、建築を仕事にするかを、実はずーっと迷っていました。
あと保育士も、海外青年協力隊も!
でも、今ではどっちでもいいじゃん、って思います。

社会に出ると理系だとか文系だとかなんて全然関係ありません。
世の中はぜーんぶがごちゃごちゃに混ざり合っっているのですから。
だから好きな事は、自分なりに全部混ぜてやればいい。

そしてそんなごちゃごちゃに混ざりあった世界が好きで僕は建築の設計をしているのだし、
今日の授業みたいにどんな複雑な世界でも、必ず因数分解できるのだから!

国語も料理も数学もケンチクも音楽もお笑いも。

と、
そんな事を改めて教えていただいた大同窓会でした!

あー、また高校行き直したい!
そして2度目も佐賀西高に入学したいなー。

posted by 西久保毅人 at 00:24| 2022年10月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月16日

オープンハウスのお知らせです。10月22日(土曜日)!






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このおうちはですねぇ、、、、、
と伝えたい事、たくさんあるのですが、
書き始めるとキリがなくなりそうなので、ひとまず告知のみにしておきます!(笑)


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でも毎度の事ながら、
完成するのは嬉しいけれど、
工事が終わるのは寂しいなぁ、、、、と思います。

そんな訳で、(意図的に??)未完成部分も忍ばせておりますので、
ご入居後に残工事を言い訳にお邪魔するのも楽しみです!


ひとまずオープンハウス、とても楽しみ!

ぜひ!


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posted by 西久保毅人 at 19:02| 2022年10月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月21日

「現場」が「現場」じゃなくなる時

さて明日は「小松さんの家」のオープンハウスです!

今日は秋晴れのいいお天気の中、お引き渡しに向けて最終調整の日。
とはいえもうあんまり決めることもないので、のんびり現場で過ごしつつ、
小松さんファミリーも午後からみんなで現場を堪能しました!

建築の現場は、まぁ工事現場だから基本的には約半年くらいの間は「工事現場な」感じ。
だから、こういう「現場が現場じゃなくなる時間」っていうのは本当にほんのひと時です。

この時間がまた半年くらい続いて、それからお引き渡しだったらいいのに、、、、って時々思います(笑)。


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そんな訳にもいかないので、今日は現場の中心だった宮嶋工務店の大矢知さんと大工の花家さんと小松ファミリーとで
記念写真を撮りました。こういうの。現場のバタバタの中でいっつも忘れちゃうので大事ですね!
小松さんが「ぜひ、ぜったい記念写真撮りましょう!!!!」言ってくれて嬉しかったです!


さて、昨日「はじめて」っていう記事をインスタの方に書きました。

ほんとにもう、これだけ長くおんなじ仕事をしていると多少でもマンネリで、「いつもの!」になりそうなものですが、
「はじめて」がたくさんあります。

特に小松さんちは、平面のかたちとかは、案外シンプルなのですが、
シンプルなものほど奥深い、とはよく言ったもの。
あーでもない、こーでもない、と図面上では対して変化がないにも関わらず、
ずーーーっと何がベストか?を考え続けていたなぁ、、、と思います。

そのかいあって、小松家が「さて、この家、引き渡されちゃったけどどう住もう??」って
毎日考えながら楽しんでもらえそうな空間になったなーと感慨深く思いました。

それは、「完成した住宅」を渡された、っていうよりも、
もしかしたら洞窟を渡されて、いちおう雨には濡れないし、猛獣には襲われないけど
どうやって「わたしたちの家にしていこうか?」っていうような事かも知れないなーって思いました。


答えはあるのかどうかは分かりませんし、
日々正解が変わっていくのかも知れません。
でもなんか、そういう答えのないような空間を、この家づくりを通して求められていたんじゃないのかな、、、と
完成を間際にして、ようやく思えるようになりました。


たぶん、間違ってないと思いますけど(笑笑)。


さて「はじめて」でいうと、この現場を担当してくれた岩下さんにとっては、
ニコに入って初めて完成を迎えるおうちです。(最初から最後まで担当したものは)
設計の仕事自体、まだ始めたばかりなので、すべてがきっと新鮮な体験だったんじゃないかなと思います。

僕も初めての現場の事、いまだに忘れられないですからね〜。
もちろん失敗や怒られたり、後悔したりの方が多かったですけど、
自分の一つ一つの決断、それが一生懸命考えたものであれ、そうでないものであれ、
まざまざと目の前に結果として立ち現れていく衝撃、
そして、たくさんの職人さんの力をかりてしか建築は建ち上がらないという事。
決して図面通りにも、思い通りにもならないという事。

そんなことが悔しくて、忘れられなくて、嬉しくて、僕はこの仕事をしているような気がします。

素敵なお施主さん、素敵な職人さんに恵まれて、
きっと岩下さんにとっても建築が大好きでやめられなくなる現場だったんじゃないかな?

、、、、、、、、そ、そうだといいけど(汗)



そんな訳でようやくコロナ禍も開けて(?)、
久しぶりにのびのびとしたオープンハウスになりそうです。



楽しみ!
posted by 西久保毅人 at 23:39| 2022年10月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月24日

キャンプの夜がこのまま続けばいいのに

先週の土曜日の小松さんの家のオープンハウス。
お天気も良く、たくさんの方にご来場いただきました!

どうもありがとうございました!

久しぶりのオープンハウスでもあるし、
なんとなく「コロナ禍」っていう言葉も聞かなくなってきて
考えてみると2年ぶりくらいの身も心もオープンな気持ちでのオープンハウスだった気がしますねー。感慨深い。



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そんな訳で最近は日没時間が早いので、夕方からだんだん暗くなるのを感じながら
オープンハウス後を過ごしました。

どの時間帯も居心地の良い家だなーと自画自賛!!!

しかし、毎度の事ながらこの完成した状態をのんびりごせる時間って僕たち設計者にとってはほんのわずかです。
なぜなら「ひとの家」だから。

でもひとの家だからこそ「本当にこれでいいのか??」って一生懸命考えてしまう訳ですけどね。。。

ああ、自己矛盾(笑)

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小松さんの家の設計については、完成までいろいろ考えた事がたくさんあるんですけど、
それはひとまず置いといて、、、、。
完成後の家にて小松ファミリーと食事しながら、お酒を飲みながら過ごしていると
家っていうよりキャンプの夜みたいだなーっって思いました。

自然の中で、それほど光も十分ではない中で過ごす夜。
ぜんぜん便利ではないのだけれど、だからこそ夜空を眺めたり、遠くを感じたり、人とたくさん話したり。
相手の顔も、はっきりは見えないからたくさん喋れたり、いつもより近くにいたり。

そういう家を設計してくれと直接言われた訳ではなかったんですけど、
いろいろお打ち合わせやメールのやりとりをする中で、そういう空間に近づける事が答えなのでは??
と考えながらいろんな決断をしていった気がします。


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都会から離れたキャンプの夜、

「あーこの夜がこのまま続けばいいのに」

と思ったりする人もいるでしょうし、そんな事を目指して自然の中に移住する人も多いです。

でも、そんな夜が東京の普通の住宅地でも手に入れらるんじゃないだろうか?
毎日のお仕事から帰った普通の日の夜、
学校から帰った普通の日の夕方夜、

そんな気分を獲得でいたら最高だよなぁーって思いました。
子供たちも大人たちも、思い思いに過ごしながら。

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と、そんな事を考えながら写真に映った子供達やみんなの顔を見ていると、
少しは近づけたんじゃないかなぁ、と思いましたがどうでしょうかね?



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そうそう、
そういえばさっき、引っ越した小松さんからメールが届きました!

『 最高すぎます。この家。
 人生で1番ワクワクしてます。
 ありがとうございます!  』

とだけ書いてあるめっちゃ短いメール。
めっちゃ小松さんっぽい(笑)。

僕たちとしてはお風呂がどうとか、どこがどうとか、どこが困ったとか、、、
もっと聞きたい事たーくさんあるんですけどね、、、、、、。


まぁ、続きはおいおい、という事で。。。

小松家のキャンプの夜が、ずっと続きますように!


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posted by 西久保毅人 at 23:48| 2022年10月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする