2022年03月15日

答え合わせ

毎年、嬉しいことにいろんな大学から学生たちがインターンに来てくれます。
大抵2週間くらいの期間なのですが、
僕らのような小さな設計事務所だと来てくれるタイミングによって、
その間に体験できることも変わるのが、いいところでもあり悪いところでもあり。
現場に行くのが多い時もあれば、完成間際やオープンハウスに立ち会えたり、プレゼンの模型作業が多い時期だったり。


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ここ数年、そんな事が続いていているのですが、
そんな僕たち側のタイミングによって、その子の事を早い段階でわかる時もあれば、
期間の終了間際にその子らしさが分かったりするので、それがもったいないなぁ、と
常々思っていました。
まぁ、さっさと初日に飲み会でもすればいいのですが、そういう時期でもないですしね(笑)


そこで、事務所で話して、

「インターンの初日に何か共通課題みたいなものをしてもらうのはどう??」

っていう事になりました。
そしたら最初の数日でその子が何が得意で何が不得意かとか、どんな個性があるのかとかが
分かりやすいし、

と思ったのです。


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内容の理想としては
1日、まぁかかっても2日くらいで完成する課題にしましょうね!

という訳で小さい方がいいかなと思い、ニコ最小の小さなおうちの名作、
飯島さんの家を課題にしてみました。

これならちっちゃいし、曲面も適度にあったりして、程よい難易度。課題としてはいろいろ分かりそう。


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まぁ、そんな感じだったのですが、、、、。


思いのほか完成に時間がかかり(笑)、
でも中途半端に終わらせるのもなぁ、、、、と気づくと1週間(笑)。


、、、、、難しい課題だったかね(汗)。

などと話ていたのですが、時間がかかればかかるほどに、
課題のはずの模型に「愛着」という別の愛情がみなの中に発生してしまいました(笑)。


そんな訳で、ますます簡単に終わらせるわけにはいきません。


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と、
そんなタイミングで、
ちょうど飯島さんちにうかがう用事ができまして(むりやり)。

じゃぁせっかくだから、
模型をもって飯島さんちに行って
答え合わせをするっていうのはどうでしょうか?

という事になりました。


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実は、いまだに飯島さんのおうちの記事をみてニコ設計室を知っていただく事も多いのですが、
完成してかれこれもう10年経ちます。
そうすると、ニコの新しいスタッフたちは、飯島さんちに行ったことがない子達も増えてきたのです。
そういう意味では、インターンの課題でもありつつも、
ニコの新人スタッフの子達が、ニコ設計室を改めて知るための機会にもなりますしね。



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さて、そんな飯島さんち。

お天気も良く、模型を持って皆でうかがってきました!
もう10年近く経ちますが、やっぱりいいおうちだなぁ。

若者たちは、新鮮な眼差しで。

僕は、当時のお打ち合わせの事。現場での事など、いろいろ思い浮かべながら見学させていただきました。


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10年前の自分の決断が10年後の目で見ても良かったかどうか?という事も改めて確認しつつ、
10年後の今、見失っている事もあるのではないだろうか?という事も自問自答しながら。

飯島さんちをきっかけに進化している部分もあるなぁ、とも思いますし、
飯島さんちで工夫した事が、今のニコ設計室に足りないのでは??という気付きもあり。

そんな訳で、僕もあらためて2週間飯島さんちを復習できて新鮮な時間でした。
学生にとっても図面と写真から想像しながら模型を作って
それを実物の家に持っていって確認するなんて、終わってみたらめっちゃ贅沢な
カリキュラムの2週間じゃぁなかったでしょうか?
まったく当初は予定していなかった行き当たりばったりな2週間でしたけどね。


そして僕はまぁ思い入れがあるからこんな感想な訳ですが、

まぁ、
本人がどう思ってどう感じているのかは、、、、、、さっぱり分かりませんけどね(笑)。
20歳だし。


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と、そんな訳で仕事の合間に思いつきでやってみた企画だったのですが、
学生よりも、むしろ僕たちの方が過去の設計を思い出しながら時間を過ごせたので
有意義な時間だったなーと思います。

今後は飯島さんちを毎回の共通課題としてインターンの学生が来るたびに作ってもらう、
というのが、課題っぽくていいかなと思いつつ、
いやいやせっかくなら毎回ちがう家の方がいいのでは?という新しい欲もありつつ。


どうなるこちやらですが、
とても有意義な企画でしたよ!

飯島さん、ありがとうございました!


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posted by 西久保毅人 at 11:43| 2022.03月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月17日

公園とちいさな家

もうちょうど一月ほど前になりますが、
杉並区で完成しました「公園とちいさな家」のオープンハウスをさせていただきました!


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「公園とちいさな家」っていうタイトルだからといってもそんなには「ちいさく」ないんでしょ??
って思われるかも知れませんよね。
でも、このおうちは血統書付きに小さくて、敷地の大きさが33u(10坪)です。

てことは、実際の家の大きさはけんぺい率によりその5、6割になっちゃうのが通常ですので、
おおさっぱに言うと、ユニットバス付きの6畳の学生アパートくらいの感じなのです。

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ただ敷地の裏側には、大きな木の生えた明るい児童公園があって、それほど大きな公園ではないのですが、
敷地がめっちゃ小さいのでそのコントラストでめちゃくちゃ広く感じます(笑)。
これまでで一番小さな敷地の飯島さんちも、敷地はほぼおんなじくらいの大きさなんですが、
敷地の目の前に、たくさんの巨木のはえた森があり、完成したおうちにいるとまるで森の中に住んで入りかのような気持ちになります。
なのでこの敷地でも、「まるで公園に住んでいるかのような」家になるといいなぁ、、、というのが最初に思った事です。



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とはいえ。

やぱり極端すぎるほど小さいって、設計してても怖い部分もあります。

「本当にこんなに小さいって分かっててこの土地を買ったのだろうか、、、?」

そう、家づくりで一番大切なのは、特に小さな時に一番大切なのは、

「小さい。けど私たちは大丈夫!」

っていう事への、ぼんやりとした信頼関係と、できない事を共有する事のように思います。




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さて中へ。
敷地は、昔ながらの細い私道にありましてこの一角は近隣の中でもとても素敵なエリアです。
特に角にあるお花屋さんがモリモリと素晴らしくて。
このお花屋さんがあるなら、あんまり家に植物が生えていなくっても、このお花屋さんまで自分ちだと
思えばいいね!って思えるような素敵な場所。

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そうそう、飯島さんちもそうでしたが、
敷地の中だけに住む、って考えるんじゃなくって、この街に住むのだ、この街が私たちの家の敷地なのだ、って
思考を広げて考えると、家づくりはがぜん楽しくなります。

だって敷地境界線なんて、不動産屋さんの図面に書いてあるだけで、街にはどこにもそんなラインはないんですから。
頭の中でどこまで「自分ち」って思おうがそれは自由なのです。


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さて、超小さいおうちの設計で、よくあるコトとしては、

「あのー、、、小さいのは分かっているんですけどどうしても〇〇を入れたいんですけど、、、、。」

っていう事があります。

飯島さんちは、超でかい業務用のキッチンコンロだったり、
そういえば本間さんちでは、超ーでかいバスタブだったり。

他にもいろいろあったんですが、それらが可愛く思えるように、このおうちでは過去を凌駕するような大きな品物!


「あのー、、、、。小さいのは重々承知なんですが、

 わたしの生涯のパートナーであるグランドピアノはぜーーーーったいに必須なのです!!!!!!」



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と、そんな訳で、
あれやこれやと考えた挙句に、
半地下のスペースをグランドピアノ室にしました。
そしてせっかくだから、ハウスコンサートの客席にもなるように
半地下への階段は、広めに。

そして、全体的にスキップフロアの構成にして、家中でピアノの響きを楽しめるような、
そんなおうちをテーマに設計をさせていただきました。



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そして、南側はどこからでも公園を楽しめるように。

さらに道路側は、先ほど書いた素敵なお花屋さんの植物や角地の向こうの街の気配を楽しめるように
少しだけ斜めの平面形にしています。
そういう意味では、最初は「小さい」っていう事が気になりましたが、
家の両側が素敵なシーンを楽しめるって、めちゃくちゃ贅沢な家だなぁ、、、、、。


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キッチンからの風景。

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そんな風景を眺めながら3階にあがると寝室と、さらにバスルームがあります。


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3階の寝室から公園をながめた風景。

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そうそう、象設計集団の富田玲子さんや、「家づくりのつぼノート」の編集者である松井晴子さんも
見学に来てくれました。

20代の前半、富田さんのなにげない言葉にとても感動して、
いまでもそれが僕の中に染み付いていて、、、。

「わたしはね、60歳過ぎてから、建築って地面とどう関わるかなんだなぁ、、、ってようやく気づいたのよ!!!」

「さいきんのツルツルしてピカピカの建築は気持ち悪くてだめねぇ。」

「何にでも使えるような四角くてツルツルの建築は、結局何にでも使えないのよ。」

「誰かのために一生懸命考えられた建築の方が、結局は何にでも使えるのよね。不思議ね。」

「桜前線ってあるでしょ。日本は南北に長いから日本の南から北まで続く一本道をつくって、
 みんなで並んでね、桜が咲いたら順番に手をつなぐの。素敵じゃない?」


そんな雑談の際のなにげない素敵な言葉が、僕のねっこにいつまでも染み込んでいますので、いつか

「富田さんをぎゃふんと言わせるような建築をつくりたい!!!」


と思いながら今でも僕は建築を作り続けているといっても過言ではありません。
富田さん、ありがとうございました!!


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話はそれましたが、このおうちの吹き抜けの一番上にある天井はこんな風に曲面になっています。
この中に階段があるので階段に沿って斜めでもぜんぜん構わないのですが、
とっても小さな家の吹き抜けを見上げると、お月さまのような大きなまるい形が見えたり、
この写真のように道路側と公園側の風景を、まるで境界がないように繋いでくれたり。

そんな存在になるといいなぁ、、、と思ってこの天井は曲面になっています。


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そんな天井を通り過ぎ、寝室を抜けるとそこには屋上へつながるバスルームがあります。
これも実は設計上は「道路側」に屋上を作る方が、実は斜線制限やいろんな法律をクリアするのには
簡単な方法だったのですが、

「すみません、どーーーーーしてもルーフテラスは公園側にしたいのです!!!!

 そこで公園を眺めながらビールを飲むためにこの土地を買ったようなものですから、、、。」


という強い要望があり、頭をひねくり回して実現したルーフレタスとバスルーム。


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だから、ルーフテラスに細い路地のような階段があったり、謎の感じになっているんですが、
完成してみたら、それがとても素晴らしくってですね!
なんていうか、バスルームからまた街に出たような感じがしたり、プライバシーの守られ感もあったりと
最高の空間ができました。

うーん、やっぱり人の話をきちんと聞くと、ミラクルがおきますね(笑)


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そうそう、今回も設計の途中に建主である渥美さんから素敵な言葉をいただきました。


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そういえば飯島さんちの尚子さんにもこんな言葉をもらったなぁ、、。

「ちいさいおうちは いいおうち 」




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ちいさいおうちは いいおうち


と、そんな訳でとても素敵なおうちが出来上がりました!
グランドピアノも無事搬入され、お引っ越しも住んだようなので、
あとは飲み会が楽しみです(笑)。


飲み会の連絡、お待ちしております!





posted by 西久保毅人 at 11:21| 2022.03月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月28日

私道犬ニコール


いろんな仕事がいろんな事情でズレて、ズレて、ズレて、、、、。


そんな訳で4月を前にいろんな現場が着工ラッシュの今日この頃ですが、

先日、杉並区で進行中の鬼丸さんの家の地鎮祭を行いました!



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敷地は、私道に接道している旗竿敷地で、

その奥に中庭のあるようなおうちになる予定です。

1階には、アトリエがあります。



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旗竿敷地ですが、家の中まで街が続いていくようなイメージで

計画させていただきました!

完成が楽しみです。



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さて、地鎮祭の日はたいてい工務店さん、ご家族、設計者で

ご近所さんたちに工事の挨拶も行う事が多いのですが、

どうしても工事は迷惑業。


音も出るし、汚れるし、大きな車も止まるので

近隣の方々に嫌がられる事も実際は多いので結構、注意が必要です。


しかも接道しているのが「私道」と呼ばれる昔ながらの道なので、

こういう道は、いろんなしがらみがある事も多く、工事がスムーズに進まない事も多々あります。


今回はどんな私道だろう、、、、?


と恐る恐るご挨拶に回ったのですが、

生まれた時からこの街に住んでいるというおじいちゃんから、新しい人までとても

好意的に迎えてくれてとても安心しました。




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さて、挨拶が終わる頃、


「ニコちゃん。ニコちゃん」


という声が。。。。


聞き間違えかと思っていると、大きな白い犬が出てきて、その犬の名前がどうやら「ニコちゃん」との事でした。

とてもおとなしい綺麗な犬で、この私道の人気者との事!


ニコちゃんも、とても安心して私道をうろちょろして街の人たちにも、「あら、ニコちゃん!」って

愛されているのがとてもよくわかりました。


本名は、ニコールというらしいのですが、

まさかニコ設計室の現場の私道の人気者がニコちゃんとは、、、、。


まさに運命の出会いですね!




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そして、もうひとつミラクルがあって。


実は鬼丸さんの奥様が昨年描かれた絵本の物語がありまして、

その物語の登場人物が、

僕をモデルにした「ニコール」と、担当の岩下さんをモデルにした「ロックシー」さんなのです!


だから、鬼丸さんちを設計している事務所もニコ設計室ですし、

鬼丸さんの絵本の登場人物も、ニコールさん。

おまけに、家を作る私道の人気犬が、ニコちゃん(ニコール)だとは、、、、。



家ができる前から、とてもハッピーな気分になりました。


そのうち犬のニコールに、絵本の中の僕の役は奪われてしまう事、確定ですが(笑)











posted by 西久保毅人 at 23:51| 2022.03月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする