2021年11月01日

ちいさなおうちと「いくつか性」



早稲田大学の中谷礼仁さんが、2005年に出された
「セヴェラルネス」
という本を読んでいたら、この絵本が紹介されていました。


セヴェラルネスっていうのは、セヴェラル=いくつか
という単語から生まれた造語なのですが、それは日本語だと「いくつか性」とでも訳すみたいです。

ひとつだけでもなく、でも多数でもなく、その間にあるいくつか。

なんでもそうですが、
ひとつだけだと「特殊解だよね、それは。一つだけだし、、。」と切り捨てられがち。
逆に多数だと一般解として認知される、つまりデータとして認められる。
そんな世の中に僕たちは住んでいます。

だから多数意見や、多数が同じになるような成果を求めてしまうのですが、
ここで中谷さんが焦点をあてているのは、その間にある「いくつかしか存在しない事象」。
ひとつだけではなく、でも多数でもないために切り捨てられてしまうような事象の中に、
実は見過ごしていた大切なモノゴトの真理が埋もれてるんじゃないだろうか?

たぶんそんな想いで綴られた本です。


そんな中で、意外にもひとつの絵本が紹介されていました。

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「ちいさなおうち」

という1970年代に描かれた本です。
絵本は結構読んでるつもりだったんですが、これは読んでなかったなー、、、、と
さっそく読んでみてびっくり。

ここから先は、中谷さんの本の内容とはまったく関係ないんですが、
建築にもうかれこれ30年近く関わってきただけに、「うーむ、、」と唸るような
内容でした。

大雑把に言うと、草原にぽつんと建てられた小さなおうちがあったのですが、
時代が進むにつれてどんどん周りが都市化されていき、最終的には周りは大都市になってしまいます。
でもこのちいさなおうちだけは、周りがどんなに変わろうとそこにちょこんと立ち続けています。

でもさすがにその場所に居たくなくなったちいさなおうち。
最終的にはちいさなおうちは、車で引っ張られて、また元のようなのんびりした自然の中に
移動させてもらうのです。


もう50年以上前に描かれた未来の風景なんですが、
住宅の設計の仕事をしていると、案外似たような出来事が現実におこります。
設計した時はのんびりした風景だった周辺に、マンションが建ったり、お屋敷が切り売りされて
建売住宅が密集したり。
止まっていたはずの道路の拡張計画によって、立退を余儀なくされたり。
数年でみるみるうちにまわりの風景がガラッと変わっちゃう事も実際にあるのです。

そのほとんどが、この絵本に描かれているようにガッカリする事が多いのですが、
かといって、それを止める手立てはありません。

最近ちょうど、以前設計させていただいた「ちいさなおうち」が、
実は計画道路の拡幅事業で、もしかしたら取り壊しになっちゃうかも知れないという
連絡がありました。どうやら土地を購入するときから、そういう可能性はあったようです。
だから、どうしてもの場合は、壊さざる得ないかも知れない、
でも土地を国に買い取ってもらう訳だから、別の土地にまた家を建てる資金は手に入るらしい、
そんな話です。

でも、僕たちもそうですが、そのお施主さんも思い出多きその家が大好きなのです。
ひとつだけ都合がいいのは、そのおうちが、とてもちいさなコト。


「、、、もしそうなったら、家をどこか別の場所に移築しませんか??」


ちょうどそんな事を、現実として考えていたのです。
本当にどこまで可能かは分かりません。

でも、このおうちの唯一の特徴、「とってもちいさいこと」を考えると、
案外、どこの敷地にだって、どこの街にだって持って行けそうに思っています。
そんな訳で、「未来の移築プロジェクト」を結構真面目にお施主さんと考えています。

ちょーどそんな事を話しているタイミングで出会ったこの「ちいさなおうち」という絵本。
話してみたら有名な絵本なので結構、周りの人たちはよく知ってて(笑)、
誰かに話すたびに知らなかった事を恥ずかしく思うんですが、
僕にとっては、まさにこのタイミングで出会えた事を、とても運命的に感じています。


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これまでいろんな建築をとりまく現実に悔しい思いや、「なんでなんで??」っていう想いも
仕事を通して経験してきたからでしょうね。この絵本が、まったくファンタジーには僕には思えなかったんです。

そんな訳で、今年出会えて良かったなー、とつくづく思います。
そしてこの絵本にも導かれるような、移築プロジェクトを、
何年先かは分かりませんが実現させたいなーと真剣に考えています。

たいていのことは、思えば叶いますからね!


そしてもし実現したら、これもきっとたったひとつではなく「いくつか」の仲間入りができるのでは?
と思っているのです!
posted by 西久保毅人 at 23:02| 2021.11月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月04日

諦めないって素晴らしい

いろいろ設計をさせていただく時にいつも考えているのは、
どんなにシキチが小さかろうと、木を植えて地面をたくさん残したい、
というコトです。

これはほとんど僕の個人的な欲求でもあり、
都会で建築ができるたんびに、コンクリートでべたーーーっと
覆われてしまう住宅街の風景を見る度に感じる不快感によるものです。
だからあんまりもっともらしい理由はないんですが、、、。

そういう意味では、地面をどれだけ残せたか?っていうのが、
いいケンチクが作れたかどうかの、僕の自己評価の最大のものなんですが、
ご要望や、条件によってはなかなかうまくいかない場合もあります。


さて、これは自転車でたまに通る住宅街のおうちなんですが、
見る度にこれは素晴らしいな!って思います。


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「家もできるだけ広く作りたいし、
テラスも欲しい。

でも、木だけは絶対に切りたくない!」

そんな声が聞こえてきそうな佇まいです。


家が先か、木が先か、、、、?
気になるところですが、よくみてみると丁寧にテラスの壁が切り欠いて作ってありますね。


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これは、絶対最初に木が生えていて、
それを切らずに建てたんだと僕は思います。
もしかしたら、2階のテラス部分は後から作ったのかも知れませんが。

それでも、こういう選択の時、
じゃあ、木の枝に合わせて壁を穴開けたりすればいいじゃん!!!

っていうアイディアっていうか、気合いっていうか、、軽やかに常識を超えていく強い愛情が
見事に形になっていて通るたびに「ふふふっ」って思うのです。


諦めないって素晴らしい!!!
posted by 西久保毅人 at 20:40| 2021.11月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月09日

伝える工夫

ずっとリモート授業でやってきた工学院大学の授業が、
ようやく今日から対面授業解禁となりました!

僕は通年2年生の設計課題を担当しているんですが、実はいまの2年生って
入学の時点からコロナ禍で、最初の一年間は一切大学にいけなかった子達です。

今年も前期はギリギリ対面授業だったんですが、夏以降またリモート。
そんな学年です。


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設計の実習授業をリモートでやるって、なかなか難しい事。
しかも学生と一切会えない。

そんな中でもできるだけ考えることの楽しさや作ることの楽しさを一緒に考えたいなーと思ったので
ここ1、2年、自分なりにいろいろ工夫しました。
もう、超ーアナログ人間を売りにしていた僕ですが、伝えるために使えるものは全部使おう、っていう風に
考えられたのは、このコロナ禍の財産といえば財産です。

だから、インスタから、iPadから、ZOOM、動画撮影、タイムプラス撮影、、、、
今まで手を出さないようにしてたものまで、なんでも「使ってみよう!」っていう思考に
僕の脳みそもずいぶん切り替わったのです。



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これまでの大学での授業は、

「まぁ、授業のその場に行って、その場でいろいろ描いてあげればなんとかなる!」

っていうスタイルでやってました。
でも、コロナ禍で会えない訳だし、画面越しにしゃべるだけじゃあ、どうも伝えきれないよなぁ、、、
っていうのをあれこれ試行錯誤。

どうやったら、目の前で一緒に考えるようような授業ができるかなぁ、、とあれこれ考えたり、
対面になっても、大声でしゃべれないし、、、、ていうような事も考えた結果、
こういう、手書き(といってもiPadで描いてるんですが。)のメッセージを毎週準備する事にしました。


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それをみんなで画面共有しつつ、
またさらにその上にグリグリと描いていく、、、。

そして学生たちが提出してくる図面や資料も、画面共有しつつ、その上からグリグリグリグリ。

1年半経って最終的には、ノートパソコンとiPadを両方使って
ノートパソコンでは顔を見つつ、iPadで書き込んでいく、っていうずいぶんハイブリッドな
事までできるようになりましたよ(笑)。


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2年前の自分からすると、信じられないくらいにいろいろアプリやテクノロジーを使いこなせるようになったところで、
今日からまた対面授業。

嬉しいようで、残念なようで、、、両方の想いがあるんですが、
やっぱりお互いを近くに感じて、顔を見れるのはいいもんだなーとあらてめて思いました。

ただ、せっかくやり始めた授業前の「このお手紙メモ」は、
対面授業でも続けていこうかな、と思っています。


オチとしては、リモートだとメモを作成してもプリントアウトしなくて良かったんですが、
昨晩、「あ、プリントして配らなくては、、、(汗)」と思い出し。

今日は、プリントしてホチキスドメしたメモをみんなに渡しました。


対面で、ふた手間くらい増えちゃいました、、、、。
posted by 西久保毅人 at 23:28| 2021.11月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月01日

思い通り

今日から12月。

2021年もまもなく終わりです。
まだ1ヶ月あるけど、なんだか今年の12月はあっという間に終わりそうです。

ちょうど2019年の4月からはじまった月のとびらの運営ですが、
当初の3年間、という予定通り来年2022年の3月までとなりました。

最初は3年も楽しめる、ってドキドキしつつ始まったんですが、
終わりを目の前にするとあっという間ですねー。

これからは、できるだけ素敵に育った月とびを、オーナーの小田原さんにお返しすることをイメージしながら
進める時間です。

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3年前、急に小田原さんご家族が転勤になり、家が三年間空くことになりました。

「ど、どうする〜??」

っていうコトを、民泊運営の先輩である飯島夫妻に相談をもちかけ、
小田原さんの家を、Airbnbで民泊運営しつつ、ギャラリーを街に貢献できるスペースにしよう、
っていう2本立ての企画を小田原さんに了解いただき、スタートした月のとびら。

っていっても、貸しスペースの運営なんてやったことのない素人の集まりが、飯島さん夫妻にサポートして
もらいながら舵をきったのを思い出します。

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ちょうど世の中、インバウンドの外国人さんであふれていた2019年。
オリンピックに向けてますます外国人の旅行者が増える一方だと、民泊用のホテルまでできようとしていました。

最初のゲストが決まった時は嬉しかったですし、三年間の運営は順風満帆に思っていました。

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でも1年が過ぎ、コロナ禍になり今に至ります。
2年目からは、すべての宿泊予定がキャンセルになり。

そんな中、もう何でもやるしかないと始めたのが、いまの月とびリモートです。
いろんな目的は掲げましたが、このプロジェクトの一番の目的は、

「3年後、小田原さんご家族に前よりも素敵になったご自宅を、自信をもってお返しすること」

でした。

「ようやく自分ちに帰ってきたな〜。やっぱ自分ちが最高だな!!!」

と思っていただきたいですし、

「お、なんか3年前よりもいい感じになってるぞ、俺んち」

って思ってもらいたい。

それが全ての根っこでした。


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結局、運営に関しては、見事に
まったく思い通りにはいかなかった、というのが正直なところ。


でもそのおかげで、想像以上の素敵な出会いや出来事が次々に起き、みんなに

「えー、来年の3月でで終わっちゃうのー、これ。
 じゃあ、私たちはどこに行けば、、、??」と

と口々に言っていただくくらいに、みんなに愛される場所に育ったなーと最近思います。

もし、当初の思い通りにうまく行っていたら、
こんな場所にはなっていないだろうな、と思うのです。

僕自身も、こんなにも「月のとびら」にいるようになるなんて思ってもいませんでしたし、
おかげでこの街にとても愛着が湧き、商店街の方々とも親しくさせていただくことになりました。


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思い通りにいかなかったおかげで、月のとびらは想像以上のみんなの宝物になりました。
小田原さんと、設計のお打ち合わせの際に話していた未来の妄想が、
少しは実現できたなーと思いますし、
この建築で考え、思い描いたコトはとても正しく、強かったなーと実感することができました。


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今は、はやく小田原さんにこの月のとびらを見せたいなー、って最近思います。
月のとびらでであった仲間もはやく小田原さんに紹介したい!


「お、なんか3年前よりもいい感じになってるぞ、俺んち!!!」


って言われるのが目に浮かびます。

そんな訳で、ガヤガヤしてる時にこそっと抜き打ちで帰ってきてもらいたい今日この頃(笑)。


そしたらたくさん呑みましょうね!

思い通りにいかなかった日々を肴に。


posted by 西久保毅人 at 23:41| 2021.11月の気付き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする